つばめも

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USELESS XIIX ディスクレビュー!

みなさんこんにちはこんばんは。

今回はXIIXの2枚目のアルバム「USELESS」について。簡易的に、というか殴り書き的に語ってみる。

ちなみに筆者、ラジオをほとんど追いかけていないのでなんか間違った解釈とか変なこと言ってるかもしれないのでその辺は多めに見てください…(これはラジオで言ってたよ的なのがあったらご指摘いただけると幸いです)

 

曲の感想へ行く前に前提となる背景を整理しよう。

まずこのアルバムはちょうど1年前にリリースされた1stアルバム「White White」に次ぐ作品である。つまり1stリリース後に生まれた曲がほとんどということだ。(それはそう)

知っての通りの世の中の状況なので、1stアルバムの曲を演奏する場は次々なくなっていった。しかし、その代わりに制作に充てたり、音楽に向き合う時間が増えたからこそ生まれたアルバムだと言える。斎藤さんのアイデアをとにかく最大限引き出して、最高の形に仕立て上げてくれたのが須藤さんであり、多くのXIIXの楽曲に関わるミュージシャンたちなのだろう。

そのおかげか、1stアルバム以上にアプローチの多彩さには磨きがかかっており、カラフルな楽曲がたくさん閉じ込められている。

 

そんなUSELESSへの感情をぶちまけていこう。

 

01.Halloween Knight


XIIX「Halloween Knight 」MV

先行公開されていた曲。こういう曲は2曲目とか11曲目とかなのかなと思っていたから1曲目だとわかった時はびっくりだった。

10月20日結成に由来しているXIIXだから、同じ10月のイベントであるハロウィンをモチーフにした曲が生まれたという流れなのだろうか。そうだとするならば、1曲目への配置は、このバンドの名刺としての役割を担うためと受け取れるだろう。

また、闇を垣間見ているような歌詞や曲調がポップに歌われていて、ダーク感強めな1枚目「White White」と、ポップ強めの2枚目「USELESS」の架け橋となるような曲としても受け取れる。

歌詞を見ていくと、「なんてハイセンス!」「なんてナンセンス!」と”!”がついているのがかわいい。

 

02.No More

ロックなモードから反転してポップ路線の2曲目へ展開する。こういうメロディラインとても好き。

「まるくなってうずまって過ぎ去っていくより はみ出しながら今を歩きたい」というのはまさに1年前の音楽が大々的にできなかった期間の言葉なのだろう。

この曲には、斎藤さんの“素の心”が一番まっすぐ歌詞に乗っかっているように感じる。改めて、本当に素敵で綺麗な言葉を紡ぐ人だなと思う。

綺麗なだけでなく「嬉しくなって下/悲しくなって上」と一捻り効いた歌詞も散りばめられていてとても好き。
どの曲にも言えることだが、ちょっとした違和感を与えるような言葉の選び方や韻の踏み方に斎藤色が濃く表現されている。一つ一つの表現に奥ゆかしさを感じるのがツボ。

あとしれっと「虹」という言葉が出てくるのも良いよね(虹に過剰反応してしまうオタクの図)

 

03.フラッシュバック

「かなりやばめなフロウ」が癖にならざるを得ない歌モノ感強めの3曲目。

ポップながら全く毛色の違う3曲が続くことで、このアルバムの、ひいてはXIIXというバンドのふり幅の広さを存分に感じることができる。その一方で、キャッチーなメロディーの曲が続くことで、USELESSのポップな表情も存分に伺える。

開放感のあるメロディーがメインにいる一方で、それを邪魔せず各パートの音が遊びまくってて良い。ベースがワウワウしてるのとか、DJのサウンドとか、わかりやすく主張してて良い。

あとBメロとサビの下ハモは恐らく須藤さんの声が入っていて良い。ライブで聴くのがより楽しみになる。

 

04.ブルー

美しい表現の応酬に心を奪われてしまう4曲目。囁くような低音と霞んで消えそうな高音に美が詰め込まれている。

こういうメロウな雰囲気を作るのがうますぎてズルいですね…。こうしたメロディーや雰囲気を作るのは斎藤さんの得意な領域なんだろうなとうかがい知れることができる。

「ブルー」と一言の中に”切なさの藍色”、”寂しさの水色” と種々の表現が織り込まれている。その上で、それらの「ブルー」に対して”静かな火を青く灯した”という表現ができるのが凄まじい。斎藤さんはこの曲に対してどんな青を思い浮かべているのだろうか。

「白い息」や「真っ白な雪」という詞から冬の情景が浮かび上がる。ここで全体の構成を思い返してみると、

ハロウィン(Halloween Knight)→雪(ブルー)→春眠(ZZZZZ)・春の風(おもちゃの街)→夏(Endress Summer)と12曲を駆けながら季節が一巡するように仕組まれている。

 

05.Vivid Noise

筆者の一聴目の瞬間最大風速がトップだった曲。

「ブルー」→「ビビッド」と色合いの移り変わりがなんとなく伝わるような流れになっている。

鼻息荒めな歌い出しからもうカッコいいが渋滞している。落ち着いていたアルバムの流れにメリハリをつけるような構築美を感じて良い。

何気に歌い出しのバッキングがかなり変則的な気がするんだけど、あの半端な節で途切れる音はシンセなのかな?耳が雑なのでイマイチ聞き分けられない。

滝のように言葉が流れていくAメロと、そこから急激に音数が減って明らかに歌うのが難しそうなBメロへの展開が凄すぎた。しかも音の高低の往来が激しすぎてこれまた凄い。

16年やってる方のバンドでもここまでの暴れ馬メロディーな曲はないんじゃないだろうか。音も歌詞も展開も詰め詰めで、耳が振り回され病みつきになる。

自分で自分にこの無理難題を課していると考えると、このバンドの作詞作曲おじさんも、本業バンドの方の作詞作曲おじさんに負けず劣らずのバケモノクリエイターだなと思ってしまう。

また一つ別次元への扉を開けたようなメロディーを歌いこなし弾きこなす姿をはやく見てみたい。

あと落ちサビのベース良すぎて好き。全体的に見ても疾走感を表現するようにメロディラインの周りを這うようなベースラインが最高…。

吹き消す「フッ」については”逆に”語るまでもないですね…。表現の強さに尽きるけど、自分の中にああいう引き出しを備えているのがもう凄い。抗えない案件。

 

06.ZZZZZ

一転して再びメロウなモードの6曲目。

前作に収録されているXXXXXとのリンクを匂わせるタイトルが良い。

「XXXXX」では自主規制的な意味合いとしてタイトルの文字列を活かしていた。

今回も同様の手段が取られており、「ZZZZZ」は眠りを表す記号として用いられている。

「寝言」「春眠」「夢現」など徹底して眠りにまつわる言葉を並べた歌詞が印象的。

さながら朝の眠りを切り裂く目覚まし時計かのようなアウトロのギターが良かった。フェードアウトしていく仕掛けも面白い。しかもちゃんとこの部分の歌詞は表記されているのがより面白さを増長させる。

ボーカルをかき消すような歪んだギターをライブでどう表現していくのか要注目。

 

07.おもちゃの街


XIIX「おもちゃの街」MV

世界に誇る大名曲。12月のライブで初めて聴いた時ヴォイヴォイ泣いてしまった。

LIFE IS MUSIC!!!!!やSaturdaysなどポップ路線の曲こそあれど、ピックアップされる曲はStay MellowやHalloween Knightなどあからさまに闇を孕んだ曲ばかりだったので、「XIIXでこんなポップな曲が聴けるのか!」と初めて聴いた時から衝撃が凄かった。

まるで絵本をそのままメロディーに変身させたかのような幻想的で温かな歌詞がどこまでも続くので一生浸れてしまう。本当に好き。

この優しいフレーズやメロディーの源流はどこにあるのだろうかと考えると、やはりその答えはスカースデイルに帰する。あの曲のような優しさを、今も揺るがないものとして発揮しているということに感激してしまう。

「おもちゃ」をシンプルに「子どものころ遊んでいたおもちゃ」と解釈すると、この曲は「持ち主に遊んでもらえなくなったおもちゃ」の視点で描かれているように見える。(なんかトイストーリー3っぽいかも?)

あとこれは以前も書いた気がするけど、斎藤さんが放つ「ようこそ」という言葉には色々な光景が付随して聴こえてくるので良い。

 

08.ユースレス・シンフォニー


XIIX 「ユースレス・シンフォニー」MV

世界に誇る大名曲その2。12月のライブで初めて聴いた時ヴォイヴォイ泣いてしまった。(天丼)

爽快なグッドメロディが息つく間もなくぶん殴ってくるおもちゃの街-ユースレス・シンフォニーの並び、本当にヤバくないですか?(理由は他にも色々あるので後述)

タイトルのユースレスはuseless(役に立たないもの)とyouthless(若さを失ったこと)を掛けてカタカナ表記になっているのだろう。コーラスに挟まる「it's oh(?) ユースレス」はどちらの意味にも解釈できるのがより面白い。

歌詞カードに記載されていないのも意図的で、解釈の余地を持たせているのかななんて推測できてしまう。

そしてこれはあくまでも筆者の見解だが、「ユースレス」は「斎藤さんにとっての音楽の位置づけ」なのだろう。

”痛いくらいの情熱も、焦げのついた欲望も、しがみついている自由も、古くなっていく衝動も、尽きることのない情熱も、眩しいくらいの欲望も、いつもそばにある自由も”、すべて音楽という名のユースレスが従える感情なのだろう。

不要不急という言葉がしきりに叫ばれるこんな世界でも”役に立たないものすべて 最高だ”という詞を紡げてしまう才(斎)には抗えない。

当然と言えば当然だが、前向きな感情でないと生まれてこないようなフレーズだ。

せっかくのバンド結成から色々な枷があった期間に、こうした前向きな曲を沢山こさえていたという事実に、より勇気づけられた気がする。

また、Bメロの歌詞もこれまで歩んできた道のりを想起させる力を秘めていて好き。

”誰の言うこともわかっちゃいない それでも全てを手にしてきた 譲れるわけがない”

というフレーズには、ギターと歌を両立させ、2つのバンドを自在に奏でている彼の音楽人生とその覚悟の強さがそのまま反映されているようで胸が熱くなる。

あとこの部分の声色と音の振り方(「なぁ~アアィ!」みたいな感じの)、斎藤さんの歌い方の中で一番好き。

 

~くそでか感情論~

先述したおもちゃの街の「おもちゃ≒子どものころ遊んでいたもの」の解釈にこの曲を掛け合わせて考えると、

「おもちゃ≒子供の頃遊んでいたもの」→「ユースレス(役に立たない+若さを失ったことの象徴)」とも捉えられるのではないだろうか。

そして斎藤さんにとっての”おもちゃ”はきっと「音楽」にあたるはずだ。

だとすれば「使い古されて役に立たないかもしれない子どものころのおもちゃ」である「音楽」を今も愛していて、その愛が爆発した結果が「おもちゃの街」と「ユースレス・シンフォニー」という曲なのだろう。

おもちゃの街は「昔やっていた音楽への感情」、ユースレス・シンフォニーは「昔~今やっている音楽への感情」を表していると考えられる。だからこそこの2曲はこの順番でアルバムの中心に並べられているのだろう。

「セットで聴いてください」と言わんばかりの2曲の配置にはこんな背景があるのかもしれない。

 

09.ホロウ

ポップ大爆発ゾーンから流れを切り替えて変化球なサウンドの目立つ9曲目へ展開していく。

シンセベースっぽいサウンドがたまらない。相変わらず音の引き出しが多彩すぎるし、適材適所な音選びがすごい。

歌詞を見ていくと、こちらも表記のないフレーズがいくつもある。ちゃんと聞き取れているかわからないが「退廃的やりたい放題」の語感が最高。

パッと見だと「恋の歌」というより「音楽への恋の歌」という感じがする。(前の2曲と次の曲が好きすぎて咀嚼しきれていない面が多分にあるが、ご容赦いただきたい。ちゃんとこの曲も好きだから。)

 

10.Regulus

7-8-9-10の曲順がとてもツボ。9-10の繋ぎは聴けば聴くほどくせになって抜けない。

この曲はおもちゃの街とユースレス・シンフォニーの影に隠れて(?)12月のライブで披露されていた曲。ライブで聴いていた時から「好き~!」って感じだったので、音源で聴いてもちゃんと「好き~!」となりましたね…。(それはそう)

「境界線/平行線/未来永劫」の音の載せ方がもう性癖レベルで好き。

真夜中の狭い部屋で禅問答のように歌われていたかのような曲が、終盤で歌詞をなぞるように夜空に羽ばたいていくような展開が大好き。

1サビとラスサビで同じメロディーを歌っているのに雄大さが全然違って聴こえるのがすごい。バックの楽器のアレンジの妙。

そして1番好きなところ。しれっと流れるように歌っているけど「太陽が昇って沈むまでにこの声は何を残せるんだろう」って歌詞、激重感情が爆発してしまっていて好き。

2つのバンドでギターボーカルを極める斎藤宏介さんが残すこの言葉の意味が重すぎてひれ伏すことしかできない…。

また、「終わらない夜に焦ってる」と「夜空を焦がすよ」の対句的な表現にも美を感じて良い。

 

11.like the rain

聴かせる系な11曲目。いよいよアルバムのフィナーレを予期させるような壮大なストリングスが最高。思わず「どこの映画の主題歌ですか?」って言いたくなるような王道バラード。

「当たり前の日々は当たり前のことが起きればよかった」など去年の巣ごもりの時期に書かれたものと思しき歌詞が特徴的。

そう仮定すれば「雨」というのはたまたま起きてしまった不幸なことのモチーフで、「あなた」は音楽やライブや音楽を聴いてくれる人を意味しているのだろうな。どこまでも表現が洒落ていて…。

 

12.Endress Summer

タイトルから底抜けに明るい曲を連想していたが、思ったよりもバラードチックで、良い意味で裏切られた爽快な12曲目。

でもよく考えれば斎藤さんは夏!アゲ~!みたいな曲書かなそうだよな…(「海にもやしって生えてないじゃないですか」発言を思い出しながら)

「Endlessなのに終わろうとしている夏」 のもどかしさが、これまた詞的で美しい言葉に囲まれて書き表されていて最高。

「そっと水平線をなぞって雲と海の隙間こじ開けよう」とか「塗りたての絵の具のような毎日」とか、良いが過ぎる。3分足らずで爽やかであっさりと終わってしまうのも良い。

何より、このアルバムの最後を締め括るフレーズが

「変わらないものは一つもないらしい

今を愛して気がついたこと」

というのも夥しい数の物語を背景に見出すことができて好き。

まさしく”XIIXの(斎藤さんの)今”を表したアルバムの結びに相応しいフレーズだろう。

前述したようにこの曲で夏が終わり、1曲目のHalloween Knightへ季節が巡っていく。

もう1周、もう1周とUSELESSを楽しむことができる仕掛けまで愛おしいことこの上ない。後味が良すぎるんだよな。

 

~おわりに~

と全12曲。なるべく初めて聴いた衝動が残っているうちに文章化したいと思い、駆け足気味に感情を言語化してきましたがいかがだったでしょうか。

聴けば聴くほど、斎藤さんの音楽への向き合い方や秘めたる思いが透けてが見えてくるような気がして、とにかく衝撃的な楽しさがあるアルバムだったなというのが所感です。

当たり前のように気持ちのいいメロディーが次々襲いかかってきて、それでも12曲47分というまとまりの良さ。

まがいもなく、「良いアルバムだ!」と言い切ることができるのではないでしょうか。

1作目以上に、何か「新しい世界が拓かれたような感じ」を覚えるような作品でした。

今後もXIIXの音楽がどんな方向に転がっていくのか、楽しみで仕方ないです。

 

ということで今回はこの辺で。 

お読みいただきありがとうございました。